駿河湾フェリーに見るPPP 遠藤健(1期生)
駿河湾フェリーは、静岡県の清水港と土肥港を90分で結ぶ航路です。日本一深い「駿河湾」から日本一高い世界遺産「富士山」を望む船旅を楽しむことができます。また“ふじさん”にちなんだ県道223号線(清水港土肥線)は全国初の海上県道です。
土肥金山で採掘された金が、徳川家康公の住む駿府に向け、現在の駿河湾フェリーとほぼ 同じ航路で運ばれていた歴史も踏まえ、黄金色の船体が就航しています(写真1)。
この駿河湾フェリーでは、ハードとソフト両面での公民連携(PPP)がみられます。その 概要をご紹介します。
◆ハードの公民連携
駿河湾フェリーの船舶は静岡県が保有しています。一般社団法人ふじさん駿河湾フェリーが運航法人となり、具体の操船等の業務を富士山清水港クルーズ㈱(鈴与グループ)に委託しています。2018年(平成30年)5月、この航路を運航していた民間事業者にて、2018年度限りでの事業撤退の方針を表明したことを受け、2019年(平成31年)4月、7自治体(1県3市3町 静岡県・静岡市・下田市・伊豆市・南伊豆町・松崎町・西伊豆町)が社員となって同社団法人が設立されました。その後、同年6月、民間事業者から内航海運事業と 船舶「富士」(旅客定員414名、約1.554総トン)を譲り受け、現事業形態となりました。
官が資産を保有し、民に運営を委託する、いわば「上下分離スキーム」として運航されている点で、ハードの公民連携と言えます(図1)。

◆ソフトの公民連携
国民的アニメともいえる「ちびまる子ちゃん」は、作者さくらももこ氏の出身地である 静岡県清水市(現 静岡市清水区)が舞台とされています。
現在、駿河湾フェリーでは「ちびまる子ちゃんコラボ企画」が行われており、キャラクターによる一般船室や甲板の装飾、まるちゃんの声での船内放送など、楽しいコラボレーションが行われています(写真2~4)。その背景には「乗船自体が旅の目的・デスティネーション」となることを目指す駿河湾フェリー側の狙いがありました。
この企画は、アニメのライセンス保有会社と自治体、船舶運航会社の連携により、各主体の強みを活かしながら課題解決を狙う試みであり、まさにソフトの公民連携と言えます。
◆航路の価値
当該航路は観光資源としての価値に加え、人流・物流の確保や災害対応など、さまざまな社会的価値を有しています。
土肥港のある伊豆半島には、幕末に海防の危機感から鉄製大砲の製造に挑んで成功した「反射炉」として、国内で唯一現存する「韮山反射炉」があります。反射炉に隣接する小高い丘に存する展望デッキでは、富士山×韮山反射炉のダブル世界遺産を一枚の写真に収めることができます(※1)。
静岡県内にある2つの世界文化遺産(※2)を巡る大人の学び旅として、2026年10月12~13日に行われる「モニターツアー」(写真5 ※3)でも、この航路の魅力が評価され、駿河湾フェリーが組み込まれています。また、夕陽により黄金色に染まる駿河湾と富士山の輪郭が浮かび上がるなど、当航路でしか味わえない「海の上の特別な時間」を体験いただくべく、フェリーの経営者や船員の皆さま方の思いを載せたクラウドファンディングが行われ、2026年9月3日、無事、目標額の300万円を達成しました(※4)。その結果、10月3日(土)、清水港から黄金崎沖合を巡る特別運航が実施される予定です。
◆結びに代えて
人口減少、担い手はじめ供給力不足、物価高騰など目まぐるしい経営環境の変化により、地域の交通インフラ維持が容易ならざる時代に突入しています。その中、インフラが持つ 価値に加え、潜在価値までも発見・認識されたうえで、各種の判断がなされていくことが 求められそうです。
遠藤 健(1期生)
写真5 モニターツアー(出所 読売旅行ホームページ)
(※1)るるぶ&more 日本唯一の現存反射炉×富士山の絶景! 世界遺産のコラボが叶う
伊豆の国市“時をかけるレトロ旅”【エモい!×産業遺産】
URL:https://rurubu.jp/andmore/article/24436
(※2)「明治日本の産業革命遺産」の構成資産である韮山反射炉、「富士山ー信仰の対象と
芸術の源泉」の構成資産である三保松原など)
(※3)【東京駅・品川駅・新横浜駅・小田原駅発】 モニターツアー・2つの世界遺産と産業
に触れる大人の学び旅in 伊豆・駿河 駿河湾をフェリーで横断&伊豆長岡温泉2日間
URL:https://www.yomiuri-ryokou.co.jp/r/tour-detail/262247602%60JR13/
【三島駅発】 モニターツアー・2つの世界遺産と産業に触れる大人の学び旅
in 伊豆・駿河 駿河湾をフェリーで横断&伊豆長岡温泉2日間
URL:https://www.yomiuri-ryokou.co.jp/r/tour-detail/262247602%60SHI1/
(※4)READY FOR 「存続をかけた秋へ。幻の第4便で駿河湾フェリー本来の価値を証明
したい」 URL: https://readyfor.jp/projects/172309


